菅原孝標女の「更級日記」は、源氏物語をこよなく愛した少女の13歳から晩年までの回想録です。
ヒルズサロン朗読会では、時間の関係で、冒頭部分と、有名な「后の位も何にかはせむ」の部分、そして「春秋の優劣」を源資通と語る部分を、それぞれ原文と現代語訳で朗読させていただきました。
その源資通との会話のなかに、私の好きな和歌があります。
源資道に「いづれにか御心とどまる(どの季節が好きかですか)」
と尋ねられた孝標女。
もう一人の女房が「秋の夜が・・・」と答えたので、同じようには答えまいと思い、
「あさみどり花もひとつに霞みつつおぼろに見ゆる春の夜の月」
(浅緑の空も、咲き匂う花もみな一様に霞みに溶けておぼろに見える春の夜の月こそ、
こよなく心魅かれます)
と答えます。
すると、源資通は、何回もその歌を口ずさみ
「今宵より後の命のもしもあらばさは春の夜を形見と思はむ」
(私の命がこれからも永らえておりましたら、春の夜の風情をあなたとお目にかかった ときの思い出にいたしましょう)
と言ったのです。
この時以来、二人が再会することはありませんでした・・・。
【朗読】「更級日記」より 春秋の優劣
菅原孝標女の歌に合わせて、縹色に月と兎の柄の小紋を着てみました。
左が内藤和美さん、右が私☆
さらにこの日の帯留めは、
コスチュームジュエラーでもある義妹の作品を借用。
優しい色合いのなかにキラッと光る帯留めは、菅原孝標女の和歌のセンスのようです。